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ファニーキンキー
第11章 それは解放


「バイトだから先帰るな」

「また明日ね」

下校時のざわついた廊下で、いつも通りの帰りの挨拶。

「芋じゃないお弁当食べたい」

あたし達の会話なんて誰も聞いてやしないのに、こそっりと耳打ちをして立ち去った。
普通はここでキュンとするんだろうな…あたしは“人の好意を無駄にしたくせに!”って思っちゃった。あー、ひねくれてる。

「椎ちゃん、帰ろー」

教室の入口から、まだ席に座って携帯をのぞいている椎ちゃんに向かって声をかけた。

「ごめんねぇ、今日は委員会で集まりがあるんだって。だから先帰って」

「終わるまで待ってようか?暇だし」

「ううん、彼が学校まで迎えに来てくれるから。うふふ」

握りしめた携帯をアピールする。はいはい、今メールしてるんだね。

「もぉー、優しい彼氏!じゃあ先に帰るね。また明日」

「バイバイ」

椎ちゃんを残し、教室を後にする。

いいな、椎ちゃんの彼氏は優しくて。付き合い長いのに毎日電話したり頻繁に会ったり、ラブラブでうらやましい。それに比べてあたし達は…昼休みに一緒に過ごして、滅多にない翔太郎のバイトの休みの日に一緒に帰って、たまに家に行くだけ。
あれ、結構一緒に居れてる…?
翔太郎だって、すごく優しい人だし!
よくよく考えたら、椎ちゃんが“うらやましい”って言ってくれたほど、あたし達もラブラブだ。

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