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ファニーキンキー
第13章 それは結実
ふたりで並んで歩く時は、翔太郎側の手でカバンを持つ。だって外でベタベタするのやなんだもん。
「カバン持つよ?」
翔太郎が持ち手を握った。
「大丈夫だよ、重くないから」
頑なに自分のカバンを握りしめる。
「いーから、いーから」
にこやかに無理やり奪い取ると、ふたつのカバンをひとまとめにして肩に背負ってしまった。
「ね?」
と可愛く微笑むと案の定、手を繋いできた。
「あのねぇ…」
「寧奈は俺と手繋ぐの嫌?」
「嫌じゃないよ、翔太郎に手を握ってもらえるの嬉しいよ。けど外でベタベタするのが嫌なの、誰が見てるか分かんないし…」
「アハっ、誰も見てねーよ。見られてたって恋人なんだから構わないだろ」
“恋人”って言葉にキュンってなる。
あたしのヘンタイ癖を受け入れてくれることが必須要素で始まった関係。翔太郎がこんなあたしでもちゃんと好きでいてくれてるって実感できる言葉は素直に嬉しい。
「一緒に帰るのなんてたまになんだから、ちょっとは我慢してくれよ」
「分かった。でも、翔太郎と手を繋ぐのが嫌なわけじゃないからね」
「分かってるって。“外で”が嫌なんだろ」
頭ひとつ分、身長の高い翔太郎は、体を寄せあたしにの頭に頬をあてる。
こんなに優しい翔太郎にあたしの我が儘な価値観は、我慢をさせているんだろうか…