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片桐家の女たち
第1章 お父様との秘め事に淫らに濡れて(彩夏の場合)
 購入とはいっても、彼のご実家で購入してもらって、私たちは、家賃にも満たない無理のない金額を月々お支払いするだけです。
 結婚を機に仕事を辞めた私は、母が働いていることもあって、実家よりも彼の実家に足しげく通いました。結婚してすぐでしたから、もう、半年ほどになりますが、お母様にお茶のお作法を習い始めたのも、理由にひとつです。
 ですが、やはり、お父様とお話したい、優しい雰囲気に包まれていたい、そういう気持ちも強かったのです。お父様は、朱音ちゃんを、本当に可愛がっていらっしゃいました。 朱音ちゃん自身は、反抗期ということもあってお母様派です。時々、寂しそうでしていらしたから、その隙間を埋めて差し上げたいという気持ちもありました。
 お母様は、とても社交的な方で、お茶の教授の資格を活かして、月に2回、カルチャースクールで茶の教室を主宰していらっしゃいます。勉強を兼ねて、私をお連れになることもありましたが、まだ、助手の役割など到底できませんから、おひとりで教室に向かわれるほうが多かったのです。
 そして、そんなとき、お父様にお昼のお食事を準備するのが、いつからか、私の仕事になっていました。
 その日も、「彩夏さん、いつも悪いわね。」、そう言って、お母様がお出かけになると、きれいに片づけられたキッチンでお料理を作りました。とはいっても季節柄、冷やし中華とお吸い物といった、簡単なものをお出しするだけ。書斎からでてこられたお父様と二人で食卓を囲みます。
 そんな時に、必ず、お父様が言ってくださる「彩夏さんは、料理が上手だね。」とか「美味しいよ、今日も。」、そんな言葉が嬉しくてにこにこしてしまいます。こういった気配りは、まだ、隆司さんには真似できませんから、褒めていただける数少ない機会なのです。
 その日も、趣味の海外旅行での出来事を、身振り手振りでお話ししてくださるお父様と、楽しく食事を終えた私は、奥の書斎へと入っていくお父様も見送ってから、食器の片づけをしました。
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