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空蝉
第16章 恋文
あなたに逢えぬ 一日は あなたを想い 過ごします
ふたり重ねた 唇の 消えてはくれぬ さざめきや
抱かれた腕の 苦しさを 思い返して 過ごします
あなたに逢えぬ 一日は あなたのために 過ごします
あなたの好きな 黒髪を 鏡のまえで 梳きながら
あなたを誘う 口紅を つけては、拭い 悩みます
あなたに逢えぬ 一日は 逢いたさだけが つのります
逢えないわけを 数えては 悔し涙を 流します
逢う口実を 試しては 巡り合わせを 恨みます
あなたに逢えぬ 一日を 数えるうちに わたくしは
愛と欲との 断ち切れぬ 固い絆に 気づきます
あなたと契る 交わりの 業の深さに 気づきます
あなたに逢えぬ 幾日の 切なく、辛い 明け暮れは
あなたに逢える 一日の 激しく、深い 悦びで
消えるものでは ありません
けれど、あなたを なくすのは・・・