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第17章 ひみつ

出逢い染めるは　ネットでも　文字を重ねて　親しめば

いつしか、知己の　人となり

直接、みえぬ　気安さや　軽い、悪戯　ごころから

この身の内に　隠れ棲む　淫らの虫の　ことでさえ

問わず語りに　ぽつぽつと

口より軽い　指先が　紡いで、文字に　並べます

やがて、艶めく　このからだ　もてあましては　白日の

夢とばかりに　指先と　答えに並ぶ　恥ずかしい

文字に弄られ　気をやって　ひとりの不義に　浸ります



そんな、わたしは　他人からは　清楚な妻と　言われます

やさしい人に　守られて　しあわせだね、と　言われます

あとは、子どもと　言われても　

言われるたびに　わたしから　なにかが落ちて　ゆくようで

少し淋しく　なるだけの　そんな暮らしを　しています

鏡の前で　口紅を　引いて、わたしは　誰なのと

問えば、答える人　もなく　真っ赤に染めた　くちびるで

「わたしは、わたし　夫とは　別のひとりの　女よ」と

妖しい笑みを　浮かべます



化粧がすめば　汗ばんだ　肌を鎮めて　新しく

揃えた、下着　身につけて　鏡の前で　回ります

「黒のシルクに　朱の色の　刺繍やラメを　鏤めた

派手な下着は　いちどだけ　使えば、あとは　捨てるの」と

もたげる不安　押しのけて

濃い紫の　ワンピース、生成りのボレロ　ファーコート

いつもの「妻」の　装いに

隠してみても　裏切りの　色香は揺れて　いるようで

薄い口紅　重ねては　鏡に映る　わたしだけ

聞こえるように　言いました



「もう、決めたのよ　いちどだけ　別の男に　抱かれるの

だから、あなたも諦めて　わたしとともに　あの人が

くれない、夢に　酔いましょう」