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空蝉
第22章 悦び
いつもは白き 柔肌は 纏うものなく 肉欲の
目に晒されて 弄られて 身に恥じらいを つのらせて
息を乱して ひたすらに
あなたの声を その指を 強い力を 待ちわびて
気づかぬうちに 涙さえ 零れて落ちて おりました
目で縋りつく わたくしを 品定めする 酷薄な
視線は、なぜに これほどに
からだの奥の 煨(うずみび)を 燃えあがらせて ゆくのでしょう
その、足元に 身を投げて
すがりついては はしたなく 服の上から その肉に
頬ずりをさえ するのでしょう
けれど、あなたは つれなくて ただ、立てとだけ 囁いて
縄を扱いて みせながら
触れてもらえぬ さびしさと 縛りを想い 身悶える
からだに息が 触れるほど 近づきながら なお焦らし
理性を溶かし ゆくほどの 焦らしのときを 与えます
あなたの縄が うなじから 胸のまえへと 垂らされて
乳房に触れる それだけで 眩暈のような 悦びが
淫らな息を 漏らさせて
化粧縛りの 結び目を ひとつふたつと 結ぶたび
肌も、しっとり 汗ばんで 花さえ濡れて おりました
縄の愛撫に 遊ばれて 不思議なほどに 乱れます
飲めぬわたしも 縄酔いの 悦びになら 幾度でも
飽きることなく この肌を 染めてみたいと 願います
鏡に映る はしたなき 身悶えさえも 愛しくて
もっときつくと ねだります
あなたは椅子に 腰かけて 縄酔う姿 みつめます
グラスの酒を 傾けて 崩れる腰を 笑います
けれど、わたしは 嘲りも 触れてはくれぬ 苦しさも
冷たく醒めた 視線さえ
すべて、愛しい あなたから もらう愛撫に 思えます
そして、縄目に 身を任せ 被虐の淵に 遊びます