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空蝉
第9章 初花



春は、さくらの 花の下

ふたり、手つなぐ 日暮れ時

足早にゆく あなたには

やがて、散りゆく この花を 惜しむ気持ちは ありますか

頬の赤みを 増す花を 愛しむ気持ち ありますか

問うてみたくて 盗みみた

あなたも、ちょうど 見返して

恥じらい、染まる この花に やさしい笑みを くれました

そして、ことさら ことなげに

「きょうは、ほんとに 泊まるの」と そっと尋ねて くれました


訊ねられても なにひとつ 答えられずに 頷けば

そんな、わたしを 抱きよせて

あなたは、そっと 「ありがとう」 やさしいキスを くれました




ひとり暮らしの アパートへ はじめて向かう、黄昏は

ひそかに決めた 秘めごとの

期待に急かれ 足早な あなたと、不安 拭えない

わたしを繋ぐ 指先の

ほんの僅かな 駆け引きを やさしく染めて ゆきました


高鳴る胸の 苦しさに 歩みも遅く なりがちな

わたしに気づき さりげなく

「ごめんね、気持ち 考えず きょうは、このまま 送ろうか」

その気づかいが 嬉しくて

でも、気づかいが 恥ずかしく

なにも言えずに 目を伏せて わたしは、そっと 首を振り 

あなたの腕に 頬よせて 縋って、泣いて おりました




困る、あなたが 可笑しくて

わたし、涙の 顔のまま 思わず、吹いて 笑います

あなたは、少し もてあまし 気味の笑顔で 困り顔

そんな、あなたが 愛しくて

初めて、キスを わたしから 黄昏の中 かくれんぼ

そっと、甘えて、受けました 

誰にも、いまだ 散らされた ことなき花を あなたへと

いまは、すなおに 思えます

あなたに逢えた 喜びが あなたに、花を 愛でられる

その喜びに 翳りなく 繋がることを 感じます


わたし、あなたに 「ありがとう」

そして、手を取り「ねえ、はやく」 あなたと、ふたり 駆けました




そして、わたしの 初花を そっと、あなたに あげました




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