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僕のマミちゃん
第3章 count 5


坂道を転がり出したボールのように、勢いよくしゃべり始める。

「果物は全般的に…好きかな」

「葡萄もメロンもいちごも栗もスイカも梨もさくらんぼもグレープフルーツもみかんもりんごも?」

「栗も果物なの?」

「え?違うっけ?子供の頃から果物だと思ってたー。駅の裏にある八百屋さんで秋になると柿と栗を売り出してたから、てっきり果物だと思ってたよ。あははっ」

「そう言われれば、野菜じゃなさそう…」

やっぱり、たくさんおしゃべりしてくれる悟くんの方がホッとする。


私は本を読むことで多くの言葉を学んでるつもり。なのに、頭の中に言葉が浮かんできても、泡のように消えてしまって、何を話したらいいのか戸惑っているうちに話すタイミングを逃してしまう。典型的な口下手。

そんな私が受け答えしやすいように悟くんは手引きしてくれる。言葉数も少なかった私に、臆することなく明るく、たくさん話しかけてくれるから、時々ついていけなくなることもあるけど、しゃべることに対しての恐怖心が薄らいでいく。


スマホを手にした悟くんが片手で操作しはじめた。

「調べてみるね。くーり…っと。うははっ、みんな同じこと考えてるよ?『栗は野菜か果物か?』だって。……あー、やっぱり果物で合ってるって…いや待って、野菜だって。
いったいどっちなんだ?ふむふむ核果類に分類されるってさ。『果』だかから果物かな?あーあ、わかんなくなっちゃった」

「さ、悟くんが果物だって思うなら、果物かな…」

悟くんの考えに同感することが重要な私にはどっちでもいいことだった。

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