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幸せの欠片
第10章 旅立ち
あのピアスを開けた翌日、麻衣とアリアは、それぞれの自宅に戻った。
以後、時折は悟の要望でクラブに出掛け、三人で楽しむことを続けていたが、常にプライベートな空間を確保していた。
アリアが研究のために原に緊縛を習い、麻衣が練習台になるので、それ自体をショーにすることはあっても、他には出ないと悟に告げ、それについてはすぐに認められた。
愛情でつながっている関係だから、それを商業的に売るような感覚を覚えるのは嫌だと、アリアがはっきりと言ってくれた。そしてそれは、麻衣の意見でもあった。
麻衣は、やはり夫を愛していたし、同時にアリアのことも愛していたから、今の関係がずっと続けばいいと思っていた。
しかしアリアは、留学の期間を終えたら、すぐに帰国することを考えていた。
それについては、麻衣が、あれこれと引き伸ばす方法を提案したが、ここに残るよりも自国に帰って早くビジネスを始めたいと言うアリアの気持ちには抗えずに、黙って見送ることになった。
アリアが去ると、途端に寂しくなった。
夫のことは詮索しない。それは、クラブの経営のこともあるだろうし、夫自身が誰かとのプレイで楽しんでいるかもしれないけれど、もう、どちらでも良かった。
決して、投げやりになった訳ではない。
夫と一緒に生きるのには、まず嗜好を受け入れることが必要だったし、それは、麻衣の志向を開花させるものでもあった。ただ、これまでは、夫の事は全て知っておかなければならないというステレオタイプ的な妻の立場から逃れられなかったのが、ここへ来て、夫が自分の時間を有意義に過ごしているとしたら、妻としては、それで良いと思えるようになって来たということなのだ。
これまでいくつものカルチャースクールに通って来たけれど、今度は、本気で英語を学ぼうと、語学学校に通うことにした。
まだ、何も具体的になっているわけではなかったが、いつの日か、アリアに会いに行けたら・・・・・・という思いが、初めて麻衣に強い意志を持たせていた。
最初は小馬鹿にしたような笑みを浮かべた夫の悟も、麻衣があまりにも熱心なので、方法は特殊だったが、時折は麻衣の学習を手伝ってくれるようになった。