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幸せの欠片
第7章 夫の企て
 火曜日。

 今日もスポーツジムへ出掛けなければならない。

 櫂とアリアの顔が思い出されると、体の芯が熱くなる気がした。

 痛みを考えると怖いようにも思えるのに、もっと刺激を与えて欲しいという欲も芽生えていた。

 恥ずかしがり屋である上、はしたないことはいけないという教育を受けて来たので、自ら何かをして欲しいと言うことはなかなか出来ない。

 でも、強制されることで、その鎧が剥がされ、淫らになることが出来た。

 あの痴漢に遭った日以来の変化を考えると、これまでの日常は、ただ、ぼうっとしていただけで無為に過ごしたという気さえする。

 夫は、麻衣を変えようとしているのかとも思ったけれど、もしかすると、奥に潜んでいた被虐的な性質のあることを知っていて、引き出そうとしているだけなのかもしれないと思い始めた。

 
 
 昨日と同じエレベーターに乗り、今日は、直接4階へ上がった。

 エレベーターホールには、アリアが待っていた。


「麻衣さん!」


 親しみを込めた声で迎えてくれる。

 今日のアリアはベリーダンスの衣装ではなく、生成りのショルダーオフのセーターに、茶色の短めのタイトスカートの組み合わせだった。

 そういうシンプルな着衣でも、アリアのスタイルの良さは隠せなかった。


「来ないかもしれないと思ってたんですけど、来てくれて良かったです」


 そう言われると、心の奥の欲望を見透かされるような気がして恥ずかしかった。

 でも、性的な交わりを別にしてもアリアは好きだった。

 明るくて、オープンで、麻衣とは正反対のところに立っている人のように見える。

 そういうところを魅力に感じるのかもしれないと思った。


「今日は、昨日と違うお部屋です」


 そう言って、アリアの開けた部屋には、すぐに三人分のソファーセットがあり、そこに笑顔の櫂が座っていた。


「おはようございます、麻衣さん。昨夜は良く眠れましたか?」

「はい。ぐっすり休めました・・・・・・」

「良かった。では、トレーニングを始めますが、今日はお腹をきれいにする準備があります」


 麻衣には深い意味は理解できず、お腹の外見を美しくするという意味だと思っていた。


「ありがとうございます」

「では、アリアに仕度を手伝ってもらってください」

「はい」

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