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幸せの欠片
第7章 夫の企て
 アリアの服装から、今日は、特別な衣装は用意されていないのだろうということは察しがついた。

 少し期待をしていたけれど、またチャンスはあるかも、と考えることにした。

 昨日の部屋と同じように、目の前に分厚い扉はあったが、アリアは、そちらへは向かわずに別の方向へ案内した。


「今日は、衣装ではなくて、ガウンだけを着て頂きます。あとで、このバスルームを使うので、着替えは、ここに置いておいて下さい」

「はい。わかりました」


 麻衣は、素直にアリアに従った。

 ガウンは特にお洒落とは言えないが、ワイン色に金糸でMのイニシャルが背中に刺繍されていた。


「麻衣さんのMですよ」

「本当に?」

「えぇ、麻衣さん専用のガウンだから」


 もしかしたら、夫が準備させたのかもしれないと、ふと思った。

 着替えを済ませると、アリアがガウンの上から体を撫でる。

 胸から腰のくびれ、そして秘所をさっと撫でると、前からお尻を抱くようにした。

 そんな仕草がアリアはとてもセクシーで様になった。


「いいですか?」

「はい……」

「では、行きましょう」


 案内されたのは、やはり扉を開閉すると、フワーッと空気の音のする防音設備のある部屋だった。

 入ってすぐに、ここにトイレがあります、と左手の扉を指差してアリアが説明した。

 照明が暗めだったので、階段があるから気をつけるよう注意を促されながら、三段登った。

 なんとなく鉄の重い柱があるような感じがしたが、中に入るまで、それが鉄格子だとは気づかなかった。

 ガチャーンと音がして、鉄の格子扉が閉められると、周囲が少し明るくなった。

 はっと周囲を見ると、アリアは鉄格子の外にいて、中には櫂がいた。

 隣には、もう一人、初めての男性がいた。


「この人はドクターです」


 櫂に紹介され、麻衣は、とりあえず頭を下げてお辞儀をした。


「まず、診察をするのでベッドに上がって下さい」と言われ、何故だかわからなかったが、ベッドの上に上がって座った。


 ベッドと言っても、ちょうど診察台のように、板に薄いクッションを乗せ合成の皮を張っただけのものだった。


「では、目隠しをします」


 そのままアイマスクのようなものを目に当てられて、立つように言われた。

 
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