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幸せの欠片
第2章 痴漢
やがて電車のスピードがゆるくなり始めたが、麻衣の腕をつかむ男の手は少しもゆるまない。
ブレーキが強いのか、電車は一度ガクンと揺れてから駅に到着し、扉が開いた。
降りる人が動くと体の回りに僅かにゆとりが出来るのを感じた。
― もっと降りて! もっと!
出来るだけたくさんの人が降りてくれるといいのに、と祈るような気持ちでいたのにもかかわらず、人は大きく動かない。
頭の中のシミュレーションほど上手くは行かないが、自分の動く隙間さえ出来れば両腕を動かし、この手から逃れられる。たとえ逃げきって降りることが叶わなくても、きっと今よりはマシな状況になると思った。
人が乗って来る前に不意を突いて動かないと、また周囲が人で詰まってしまうかもしれない。
― 今しかない!
右腕を取り戻す為に、えいっと力を込めて必死で体を捻った時、今度は別の手が左腕を掴んだ。
― え?
強い男の力で両手を一つにされ、デパートの紙袋を持ったまま、ぐるぐると何か紐のようなものを巻きつけ括られるのが感じられた。
― う、嘘!
自由になるどころか、遂に両腕を拘束されてしまった。
何て大胆なんだろう。
それに、どうしてこの男の周囲の乗客たちは気がつかないのかしら?
もしかして気がついても知らん顔してるってこと?
麻衣の気のせいかもしれないが、何だか先の駅に到着する前より更に窮屈になったような感じさえした。
そう思うとパニックになり、心臓が更に強く早く脈を打ちはじめ、体が小刻みに震えた。
電車の中なのだから、大きな声さえ出せれば誰かが気付くはずだと自分に言い聞かせる
が、同時に誰も麻衣のことなど気にしてくれないのではないか、という考えも浮かんだ。
電車は、またすぐに動き始めた。
ガタンと揺れたその一瞬のうちに、ワンピースがサッとたくし上げられ、その裾を拘束された腕の紐の間に差し込まれた。
次に、右側からギュッと胸を掴まれた。
― 嫌だ、やめて・・・・・・!
身をよじるが腕は自由が利かないし、どういうわけか揺れても身体の回りには少しの隙間も出来ない状態だった。
ブレーキが強いのか、電車は一度ガクンと揺れてから駅に到着し、扉が開いた。
降りる人が動くと体の回りに僅かにゆとりが出来るのを感じた。
― もっと降りて! もっと!
出来るだけたくさんの人が降りてくれるといいのに、と祈るような気持ちでいたのにもかかわらず、人は大きく動かない。
頭の中のシミュレーションほど上手くは行かないが、自分の動く隙間さえ出来れば両腕を動かし、この手から逃れられる。たとえ逃げきって降りることが叶わなくても、きっと今よりはマシな状況になると思った。
人が乗って来る前に不意を突いて動かないと、また周囲が人で詰まってしまうかもしれない。
― 今しかない!
右腕を取り戻す為に、えいっと力を込めて必死で体を捻った時、今度は別の手が左腕を掴んだ。
― え?
強い男の力で両手を一つにされ、デパートの紙袋を持ったまま、ぐるぐると何か紐のようなものを巻きつけ括られるのが感じられた。
― う、嘘!
自由になるどころか、遂に両腕を拘束されてしまった。
何て大胆なんだろう。
それに、どうしてこの男の周囲の乗客たちは気がつかないのかしら?
もしかして気がついても知らん顔してるってこと?
麻衣の気のせいかもしれないが、何だか先の駅に到着する前より更に窮屈になったような感じさえした。
そう思うとパニックになり、心臓が更に強く早く脈を打ちはじめ、体が小刻みに震えた。
電車の中なのだから、大きな声さえ出せれば誰かが気付くはずだと自分に言い聞かせる
が、同時に誰も麻衣のことなど気にしてくれないのではないか、という考えも浮かんだ。
電車は、またすぐに動き始めた。
ガタンと揺れたその一瞬のうちに、ワンピースがサッとたくし上げられ、その裾を拘束された腕の紐の間に差し込まれた。
次に、右側からギュッと胸を掴まれた。
― 嫌だ、やめて・・・・・・!
身をよじるが腕は自由が利かないし、どういうわけか揺れても身体の回りには少しの隙間も出来ない状態だった。