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幸せの欠片
第8章 悟の出張

 施設の営業時間とか、相手の都合もあるので、早めの連絡は必要だとは思うが、夫にとっては麻衣の調教が、とても大事なものなのだろうと感じた。

 櫂は、あまり細かいスケジュールを教えてくれないので、荷物を置いて着替えを手伝ってもらう間に、アリアに尋ねる。


「今日からの三日間って、もうスケジュールは決まっているのかしら?」

「はい、だいたい決まっているみたいですよ」

「今日は何をするの?」

「『縛り』と書いてあるのを見ました」

「明日は?」

「明日は、マシンと……」

「マシンって、なんのことかしら?」

「私にもよくわかりませんが、昨日、荷物が届いていました」

「じゃあ、明後日は?」

「ドクターが来ます」

「あ、あれね・・・・・・」

「麻衣さん、大丈夫です。慣れると体の中がすっきりしていい気持ちですよ」

「そ、そうなのかしら?」

「そうですよ」

「今日は、緊縛ね。また水元さんの担当ね」

「はい、でも今夜は私が宿直です」

「宿直?」

「えぇ、夜のお相手だと思ってください」


 そう言うと、アリアは嬉しそうに、にこやかに笑った。

 麻衣も嬉しかった。


「嬉しいわ、アリア。私、あなたに小さなお菓子を焼いて来たの」

「え? 嬉しい! 麻衣さん!」


 そう言うと、アリアは麻衣にハグをした。


「今、渡しておくわね。私はダイエット中だから」


 麻衣は、そう言って、アリアに包みを渡した。


「ありがとうございます! じゃあ私は、今夜、たっぷりと麻衣さんにプレゼントをします」

「ありがとう……」


 麻衣はそう言いながら、顔の赫らむのを感じて下を向いてしまった。


「あ、そういえば、明日の宿直は私の知らない人の名前が書いてありました」

「そうなの?」

「まぁ、きっと櫂さんと似たような人だと思うので、大丈夫ですよ。ある意味、ここは堅い人ばかりだし……」

「えぇ……」


 アリアが言ったのは、Sで真面目という意味だろう。

 努力家の夫も同じだと思う。


「あ、時間ですよ、麻衣さん」

「はい」

「今日は、また、着るものを選べますよ」

「何にしようかしら?」

「リクエストを聞いて頂けるなら、着物姿が見たいです」

「わかった。じゃあ、着物にするわ」

 
 アリアが初日と同じ部屋へと案内した。
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