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幸せの欠片
第8章 悟の出張
翌朝、麻衣がベッドで目を覚ました時、天井の高いところにシャンデリアが下がっている風景に一瞬戸惑った。
あぁ、そうだ、ここは、スポーツジムのある建物の中で、昨夜はアリアと一緒に眠ったということを思い出し、隣を見ると、そこは空になっていた。
初めて宿泊した場所で、勝手がわからない上に、アリアがいないことで不安になった。
夜の間は、魔法がかかったように、時間も忘れて甘いことに酔いしれることができるが、朝となると、急に夢から覚めたような頼りない寂しい気持ちが襲って来た。
自分は妻で、夫は出張中。
その夫がここへ誘ったとはいえ、アリアとのことは麻衣の意思だったことを思うと、やはり後ろめたさを禁じ得ない。
小さなため息を吐いた時、アリアが大きな銀色のトレイに朝食を乗せて入って来た。
「もう起きていたのですか? せっかくコーヒーの香りで起こそうと思って頑張ったのに……」
アリアは、そう言って、笑顔の上にむくれた表情を作った。
その中に、少しだけ昨夜の名残を見つけて、麻衣は嬉しいと同時に、櫂のセリフを思い出して不安に感じた。
「まずは、オレンジジュースですよね」
そう言いながら、ストローの口を麻衣の方に向けて、グラスを差し出されると、心が甘いもので満たされて来る。
麻衣は、自分の単純さに呆れながらも、この時間を愛おしく思った。
「アリア、ありがとう」
「麻衣さん、私こそ、一緒に過ごせて嬉しかったです」
「なに? そんなお別れみたいに言わないで」
「もしかしたら、私は別の施設に送られるかもしれないので……」
「え?……」
「とりあえず、メールアドレスをお渡ししておきます」
アリアはそう言って、小さなメモを麻衣に渡した。
「アリア……」
「このメモは捨てないでください。すぐに携帯に登録すると、誰かに消されるかもしれないので、ペーパーのまま持っていてください」
「わかったわ。そんなことが起こるとは思えないけど、アリアの言う通りにする」
「じゃあ、一緒に食べましょう。このクロワッサンはおいしいので、先に一口食べてください」
「いいえ、このオムレツがとてもおいしそうだわ。いただきます」
今、必ず別れが来るとは限らないが、櫂の様子から、すぐにそれもあり得ると思った。
あぁ、そうだ、ここは、スポーツジムのある建物の中で、昨夜はアリアと一緒に眠ったということを思い出し、隣を見ると、そこは空になっていた。
初めて宿泊した場所で、勝手がわからない上に、アリアがいないことで不安になった。
夜の間は、魔法がかかったように、時間も忘れて甘いことに酔いしれることができるが、朝となると、急に夢から覚めたような頼りない寂しい気持ちが襲って来た。
自分は妻で、夫は出張中。
その夫がここへ誘ったとはいえ、アリアとのことは麻衣の意思だったことを思うと、やはり後ろめたさを禁じ得ない。
小さなため息を吐いた時、アリアが大きな銀色のトレイに朝食を乗せて入って来た。
「もう起きていたのですか? せっかくコーヒーの香りで起こそうと思って頑張ったのに……」
アリアは、そう言って、笑顔の上にむくれた表情を作った。
その中に、少しだけ昨夜の名残を見つけて、麻衣は嬉しいと同時に、櫂のセリフを思い出して不安に感じた。
「まずは、オレンジジュースですよね」
そう言いながら、ストローの口を麻衣の方に向けて、グラスを差し出されると、心が甘いもので満たされて来る。
麻衣は、自分の単純さに呆れながらも、この時間を愛おしく思った。
「アリア、ありがとう」
「麻衣さん、私こそ、一緒に過ごせて嬉しかったです」
「なに? そんなお別れみたいに言わないで」
「もしかしたら、私は別の施設に送られるかもしれないので……」
「え?……」
「とりあえず、メールアドレスをお渡ししておきます」
アリアはそう言って、小さなメモを麻衣に渡した。
「アリア……」
「このメモは捨てないでください。すぐに携帯に登録すると、誰かに消されるかもしれないので、ペーパーのまま持っていてください」
「わかったわ。そんなことが起こるとは思えないけど、アリアの言う通りにする」
「じゃあ、一緒に食べましょう。このクロワッサンはおいしいので、先に一口食べてください」
「いいえ、このオムレツがとてもおいしそうだわ。いただきます」
今、必ず別れが来るとは限らないが、櫂の様子から、すぐにそれもあり得ると思った。