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幸せの欠片
第8章 悟の出張
  麻衣は、まさに、まな板の上の鯉の状況だった。

 デボラは、麻衣と視線を合わせ、じっと見つめてからニコリともせず、「仰向けに寝なさい」と言った。

 麻衣は観念して、言われた通り、仰向けに寝た。

 デボラは手際よくロープを四隅から這わせると、麻衣の腕と足を四方向の角に固定した。

 これで麻衣は、両腕両足とも開ききった状態になった。

 体に巻きついているのは鋲の付いた黒いベルトのようなものだけで、それでも、鞭が飛んで来た時には、多少の保護になるかもしれないと思う。

 アリアと過ごした時間と引き換えにもたらされる痛みだとしたら、それも仕方がない。

 ただ、夫は嫌ならやめればいいと言ったのに約束が違う。

 けれども、そんな麻衣の抗議には誰も貸す耳を持っていないらしい。

 アリアは何らかの処分があるかも知れないという時にも潔かった。

 心をどの方向に向ければ、アリアのようになれるのか、今の麻衣には想像もつかなかったが、耐えることに慣れるのも、こういう道に踏み出した以上は、大事なことなのかも知れないと思った。

 これから何が起こるのかを思うと怖かったが、夫は麻衣のことを愛しているのだから、これまで以上のひどい仕打ちはないはずだと信じたかった。

 あれこれ考えていると、突然、グィーンという音と共に、マットレスがせり上がり始めた。

 麻衣の腕のロープは更にピンと張り、少しもゆとりがなく、動けなくなった。

 それとは逆に、腰から下のマットレスが沈んで行くと、両足が斜め下方向に引っ張られ、更に開脚して止まった。

「マシン」の意味が、ようやくわかった。

 櫂が操作盤のようなタブレットを手にして、麻衣の足元にやって来ると、あの冷たい笑みを浮かべた。


「麻衣さん、今からお仕置きですからね。ご存知のように声はいくら出しても構いませんよ」

「な、何をするんですか」

「気持ちよくなるだけですよ。心配いりません」


 デボラがチューブからゼリーを絞り出し、麻衣の秘所に塗り始めた。


「ひィッ……」

 
 見ると、麻衣の秘所から正面に、黒い金属の箱があった。

 そこから棒のようなものが、ぐんぐんと伸びて来ている。


「これは、私と同じドイツから来たマシンだから、しっかりしているの」


 デボラは、何だか自信あり気な顔をしていた。
 



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