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幸せの欠片
第9章 クラブで
「私を?」

「愛しているから虐めたいと思った」

「………」

「そして、アリアと出会ったのが2年前なんだ」

「え?」


 麻衣は、驚いてアリアを見た。

 アリアは、驚く麻衣を見て俯いた。


「会社の先輩に連れられてここへ来た時、アリアがいた。その時に初めて鞭を振るった」

「……アリアにだったのね。私ではなく……」

「誤解するな。アリアに対する気持ちは、お前に対するものと差があるというのではなく、違う種類のものなんだ」

「アリア、あなたは、どう思っていた?」

「悟さんが、私をパートナーに選んでくれたのは嬉しいと思いました。私もこの世界に入ったばかりで慣れていなかったから、一緒に進めると思ったのです」

「そう。どうしてこの世界に入りたいと思ったの?」

「わかりません。ただ、虐められることが快感に感じたからとしか言えません」

「ここに来る前は?」

「私は留学生です。だから、日本でいろいろな経験をしたいと思って、あちこちバイトをしている内に、ここのオーナーの人たちに誘われました」

「そうなの……」

「今は、国に帰ったら、自分でクラブを作りたいと思っています」

「……わかったわ」

「アリアは、麻衣と同じように、私によって破瓜を経験したんだ」

「………」

「二人とも、俺にとっては大切な人間だ。そして、誰よりも幸せや悦びを与えてやりたい相手だ。だから、肉体的に虐めを受けることによって、それを感じるお前たちには、必要なものを与えるのが愛だと思っている」

「そんな……」

 そんな理屈はおかしい、と言いたかったが、これまで習い事だけでもたくさん手を出して来た麻衣自身のことを思い返せば、何かを探し求めていたのも本当かもしれないと思った。

「今夜、呼んであるゲストは、そういう意味でも精鋭だ。お前たちを楽しませてくれるはずだ」

「嫌です。私は、あなただけに抱かれたいの」

「では、アリアとのことはどうなんだ?」

「それは……別です」

「電車でのことは?」

「まさか、あれもあなたが、仕組んだこと?」

「そうだ。ここのクラブの会員たちに頼んだんだ」


 それで、全ての辻褄が合った。

 何もかもが夫の企みだったのだ。


「アリアは? アリアもあなたが差し向けたの?」
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