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幸せの欠片
第9章 クラブで
「アリアは、私に属するものは自分も愛せると言ったんだ。あそこで手を貸してやって欲しいとは言ったが、お前たちが、そんなに仲良くなるとは予測していなかった」

「アリアと三人、私たちの関係はどうなるの?」

「お前達次第だ。私はただ、幸せにしてやろうと思っているだけだ。人生を満たしてやろうとね」

「………」

「隷属という形で開放するのだから、お前は自由に、その感覚を楽しめばいいんだよ」


 麻衣は、夫の言うことの意味の全てがわかったわけではなかった。

 自分に問いかけてみる。

 夫の言うように、被虐的な性的志向を持っていることは否めなかった。

 けれども、知らない誰かと体を重ねて快感を得ることで満たされるのだろうか?

 麻衣には、まだ理解できなかったが、アリアには2年もの経験があると言う。


「アリア、あなた幸せなの?」

「えぇ、麻衣さん。私はとても幸せです。他ではこんな風に深い快感を得られないと思います」


 麻衣はこの時、はっきり「幸せ」と言えるアリアが羨ましいと思った。

 その時、谷口がやって来て、ゲストの到着を知らせた。


「あ、シャワーしたいでしょ?」


 アリアが慌てて言うので、麻衣も慌てて頷く。

 アリアと手を繋いで、走ってシャワールームに駆け込み、一緒にシャワーを浴びた。

 シャワールームを出ると、次は衣装部屋に駆け込む。


「麻衣さん、怖がらなくていいのです。今まで以上に激しいプレイはありません。これは、加虐嗜好の人たちと一緒に楽しむプレイなのですから、衣装もお揃いにしましょう」


 アリアが言うと、心にわだかまっていたものが解けるような気がした。

 麻衣は、気持ちを切り替えて、アリアのように積極的に求めてみることにした。


「そうね。それがいいわ」

「あ、これ! これにしましょう」


 アリアがそう言って、クローゼットから出したのは、やはりベリーダンサーの衣装だった。

 麻衣にはピンクの衣装を渡し、アリアは水色を選んだ。

 谷口がやって来て、麻衣とアリアのそれぞれに首輪をつけてから、リードを繋いだ。

 アリアと並んで、這って廊下を進むと、 夫の悟がいた。「ふむ、いいぞ」

 そう言うと、夫は2本のリードを束ねるようにして掴み、もう片手には鞭を持って、床を叩いた。

 ピシッ!


「行くぞ」
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