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幸せの欠片
第9章 クラブで
「これで、どうだ? 正直に言え」

「あぁーん、あぅ、あぁ…き、気持ち良かったです」

「よし、じゃあ、もっと突いてやる」

 バックで挿入されると当たる場所が新しい快感を生み始めていた。

「あぁ……、あぁ、あぁ……」

「可愛いぞ、麻衣。もっと、突いてやるからな」

 夫は、長い間果てることなく、麻衣を突き続けた。

 気がつくとアリアは、浴場から、いなくなっていた。



 長い夜が明け、土曜日の朝がやって来ていた。

 麻衣は、VIPルームの個室で目を覚ました。

 寝返りを打った時、夫と眠っていると思っていたのが、反対側にアリアも眠っていたのには驚いた。

 しかし、不思議なことに、少しも嫌な気持ちは起こらなかった。

 昨日から、妻という立場が、ずっと遠くのものに思える。

 ほんの少し前までは、自分は平凡な主婦で、何の不安もないことが幸せだと思っていた。

 幸せというものを突き詰めて考えていなかったし、その必要もないと思っていた。

 けれども、夫にとっては、明かせない秘密を抱えての生活は、背徳感に似たものを持ち、不自由ではなかったかと想像する。

 アリアは、夫にとって麻衣とは違う意味でのパートナーだったのに違いないと思う。

 全てが明らかになった今、これからの夫婦の関係をどんな風に紡いで行くかを考えなければならないのだと思った。

 一緒にこれまで通りに生きることは、夫の好みや、それを明かしたことを否定することになる。

 麻衣自身、自分の中に被虐的な嗜好を持っているということもわかった。

 そして、バイセクシャルだとまでは思わないけれど、アリアに対して、友人としてではない愛情を感じる。

 この気持ちも大事にしたいと思った。

 夫と過ごす幸せな時間のピース、アリアとの楽しい時間のピース、そして、他に人たちとのプレイも一つのピースだと考えれば、混乱せずにいられることに気がついた。

 右に手を伸ばすと、夫が眠っている。

 麻衣は、悪戯心を起こして、左に手を伸ばした。

 アリアの乳房を優しく包むと、愛撫してみる。

 乳輪を指でなぞり、軽く乳首をつまんでみると、アリアが小さく声をあげた。

 麻衣は、心が満たされているのを感じ始めていた。


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