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幸せの欠片
第9章 クラブで
 ダイニングルームは、別にあるとアリアが言ったが、麻衣はアリアとキッチンの隅で食べることを選んだ。

「もしも、誰かが来て食べるにしても、どういう顔をしたらいいか分からないんだもの」

「そうですか……」

 アリアは、オレンジジュースを見つけて、アイスキューブと共にグラスに注ぎ、麻衣に差し出した。

 二人とも、ガウン姿のままで、朝食を楽しんだ。

「まだ、時間があるので、バスルームに行きませんか?」

「えぇ、いいわ」

 日本人が友人同士で温泉に入るような感覚で、おしゃべりができるのが嬉しかった。

 ましてや、アリアとは、じゃれ合いながら入る楽しみもある。

 お湯の中で並んで足を伸ばし、お互いの体に手を伸ばしながら話をした。

「アリアは、原さんのことをよく知っているの?」

「えぇ、知っていますよ」

「どんな人?」

「まず、頭のいい人ですね」

「それは、感じたわ」

「ここの運営を、中心になってしているのも彼です」

「そうだったの」

「地下のある、この倉庫を見つけて、がらんどうだったところを改築したそうです」

「たくさんお金がかかったでしょうね」

「元々SMクラブの仲間が、どこかのバーやホテルなどでバラバラにプレイしていたらしいのですが、それが不便ということで、出資を募ったら、意外と集まったということらしいです」

「アリアはその頃から知っているの?」

「いいえ、私はまだ2年ほどしか知らないのですが、ちょうど、ここがオープンしたばっかりだと聞いていました」

「夫とは、ここで知り合ったのね?」

「すみません」

「謝らなくてもいいの。やっと、夫のことが見えてきた感じで、それにアリアのことは私もとても好きよ」

「私も、麻衣さんを見た時から好きになっていました」

「不思議ね。夫と同じ人を好きになるなんて」

「それは、私もです。麻衣さんも悟さんも好き」

「ずっと3人一緒でもいいわね」

「私は、日本に、そう長くはいられないと思いますが……」

「そうなの?」

「はい。学生用のビザなので……」

「それについては、じっくり考えましょう」

「はい」

 返事をするアリアに唇を重ねると、麻衣は、手を乳房に這わせる。

 いつの間にか、麻衣の方が積極的にアリアを求めるようになっていた。




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