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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第28章 BLUE BIRD
『話は…それだけだ

とにかく…付き添いは我々が
家内が代わるから

君は…明日仕事もあるだろう
帰って休みなさい』




マリアのお父さんが話を終わらせて
さりげにヤツの退室を促した







『・・・っ』


〃ヤっベ…!?〃



なんて、入り口付近で盗み聞きしてた俺は
一瞬焦ったが


ヤツは…シカト、と言うか
俺に気付きもせずに


ヨロヨロと病室から出て
すぐに反対方向に去っていった









『~~っ…まりあ

なんで…こんなことに

なんで…この子だけが・・・っ』




『よしなさい……まりあが

ゆっくり休めないだろう?』





『私のせいよ…っ
上京を許したりしなければ

お嫁に行くのだって
せめてもっと…近ければ

もっと早く…手を』







・・・。


ヤツがいなくなった病室には

ヤツの手前……ずっと堪えていたであろう

両親の……その本音が溢れていた





『嘆いても時間は戻せないんだ

まりあは必ず立ち直れる
お前の…娘だからね

今までひとりで堪えてきたんだ
その分まで…これからは

家族で支えて、道標を作ってやろう
それしか…ないじゃないか。……な?』







マリアのお父さんは
本当に気丈だった

大事な娘の心や…体までも
ボロボロに傷付けられて

自分だって…悔しさや怒りは
計り知れないだろうに

あの男のことでさえ
最後まで…殴りも
怒鳴り付けもしなかった



俺が…この人の立場なら



絶対…真似できない





『ほら……泣くんじゃない

まりあが汗だくじゃないか

まりあに…付いていてあげなさい』






俺は…ヤツの事に関して勝手に
少し気が晴れるような感覚と

マリアを…守ってくれる人がいる

その事に…どこか
と言うか、かなり

確実に…安心していた


自分を苦しめる旦那や
ハラハラさせてばかりの俺よりも


目が覚めた時


そこに…このお母さんの姿があったら

マリアはどれだけ心が安らぐことか




俺は…さっさと立ち去ろうとした





けど…




『ホテル…チェックインして
荷物を預けてくるからな
ここは頼んだよ』





〃あ・・・〃



時すでに遅し




個室のマリアの病室の前で
不自然に立ってる俺は…


そのお父さんと、鉢合わせ…する
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