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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第29章 果たされぬ・・・約束
「お客さん、この辺は初めてで♪?」




『・・・。?…えぇ、まぁ』




愛想の良いタクシーの運ちゃんが
気を利かせて話してくれるのを

俺はテキトーに流して
頬杖ついて景色を見ていた




「お客さん~ついてますよ?
おっちゃんのタクシーはね

巷じゃラッキータクシーなんて
言われててね~…

○×△□~@#※*+&」



『・・・』






緑の・・・草原


牧場って言うのか



なんとも開放的な一本道


広がる緑と


遠くに牛が歩いてたり




『ふふっ・・・』




「ん?…どうかしましたかい?(笑)」





『あ・・・いえ、この辺て

鹿とか飛び出してくるんスカ?(笑)』







「ガッハハハハ!!安心して大丈夫よお客さん♪

おっちゃん鹿避けさせたら

業界ナンバーワンよ!(笑)」






『ふふっ・・・そうっすか』






無限に広がるような
広くて…やわらかい景色

肌寒いくらいの気温に対して
ほのぼのとした温かい地元民



車窓から眺める、そんな景色や
肌で感じる土地の空気感は




広くて温かい心を持つ

のびのびとした柔らかい空気を作り出す

アイツを思わせた






アイツの・・・生まれ故郷



この広い…同じ土地のどこかで


アイツは生きている




元気で・・・生きている





美味い空気を沢山吸って…


出来れば・・・笑って


出来れば・・・幸せに


生きててほしい







いや・・・きっと笑っている


笑って・・・前を向いて生きてる









俺は…自分に都合良くもあり

そして願いでもある

そんな事を思いながら




初めて見るその景色を
見とれるように眺めていた








「良ければ○○湖のあたりなんか
行ってみますかい?

せっかく来たんですしね
名所の1つ2つ観てみるのも♪」



『じゃぁ…そこで』


俺は適当にタクシーを降りる



「良いことがありますように♪」


『???』




「観光楽しんでって下さいね♪
ありがとうございました!」


ニカっと愛嬌たっぷりに笑うおっちゃん



『ふふ・・・えぇ、ありがとうございました』


俺は降りた場所を
テキトーに…

いや・・・地面を
踏みしめるように、ゆっくり歩いた
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