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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第17章 翼を・・・ください
『ねぇ・・・ゆぅちゃん
その・・・大丈夫?』



昨日よりは…少し話してくれるマリア




『あぁ、もう行くよ』






『そうじゃ・・・なくて』


『???』







『大丈夫・・・だったの?

あの人…呼んだの、ゆぅちゃんでしょ…』



『・・・』






『ゆぅちゃん・・・しか』



『・・・ごめん』






やむを得なかった・・・

そうしなければ…対処がおそければ

最悪の場合マリアは今
こうしていないかもしれなかった





『そじゃなくて…』



『マリアの古いケータイあったから幸いな…

俺は一方的に連絡しただけで

あとは接触してない・・・大丈夫』







『・・・ごめんね、ゆぅちゃん

また、ゆぅちゃんに・・・』






そしてマリアは…また

俺の心配をしていた・・・



こんな時にまで・・・




『・・・・・・バカヤロ』




『ありがとう・・・』







マリアは自分の荷物に手を伸ばして
財布や何やら漁りだした




『???』


『ごめん・・・頼まれてくれないかな?』





マリアが俺に
保険証から何から

手荷物に入っていた住所や何かを
示すものを全てまとめて渡して来た





『落ち着いたら必ず連絡する…それまで』


『マリア・・・おい?』





『この辺に住んでるのは…バレてるだろうし
時間の問題かもしれないけど

無駄かもしれないけど・・・一応これは。
それまでは…預かってもらえないかな?』



『マリア・・・お前どうする気だよ』







『病院の先生には訳を話して
あの人が来る前に退院する・・・』



『やめろ・・・マリア、無茶だけは』







『私の家の・・・ポストでも良い

お願い・・・』





そう言って、マリアの薄茶色の瞳(め)が
くりっと動いて俺をとらえた・・・




その瞳が語る想い




〃「あの男には、つかまりたくない」〃




マリアの瞳は
つよくそう言っていた・・・







冷酷無慈悲な夫・・・



そこへ戻る・・・そんな選択肢などなければ



二度と交わりすれ違うことさえも御免だ



そんな瞳・・・

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