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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第23章 逃避行・・・
マリアの一言に
俺はまたも、何も言えなくなった



安住の地はない・・・





地道に努力して、細々と…
地に足を着いて生活していても

あの旦那に見つかれば
全てが終わる

追い詰められたマリアの
究極の生活


定住せず…定職につかなければ
夫の暴力からも
どこへでも逃れられる
見つけることも困難…


逆を言えば・・・

住所不定・・・無職

身元のハッキリしない人間なんて
どこも雇わない

マトモな仕事になんか
つけない・・・ってことだ






『…どこで寝泊まりしてんだよ?』


『運良く〃お客さん〃が…泊まりなら
そのままホテルで
でなきゃネットカフェかな』







マリアは…野良犬みたいに生きていた














俺は…一方的な感情で
マリアを責めようとした自分を恥じた

そもそも…誰のせいだよ、ってハナシ






『それじゃ・・・私』


黙りコクった俺を置いて
マリアは去ろうとする



『っ!?……ちょ…待てって!』





『っ…。営業妨害しないでよ・・・
私まだ〃初心者〃だから
食べてくのに一生懸命なの』




マリアの口から
こんな言葉を聞いてるなんて
気が狂いそうだ




『っ…!んなことしてなぁ!
病気でももらったらどーすんだよ!?』





付け焼き刃…やけっぱち?
説教たれるような言い方しか…

あてもなく引き止めるような事しか
出来なくて

俺はマリアの前に立っていた



『どこの誰かわかんねぇ
キモチわりぃオヤジなんかと…っ

中には危ないヤツだって
いるかもしんねぇだろ!?
もし危ない目にでも…っ』






『ふふ…、病気?
〃相手〃からしたら、こっちの方が
何の病気もってるかわかんない

それくらいの事はわかって、お互い
〃ちゃんとしてる〃に決まってるじゃない

危ない?…キモチ悪いオヤジ?

ふふ・・・ケッコウじゃない』




力なく…卑屈げにマリアが笑う




『マリア・・・』





『…本当に〃危ない人〃に比べたら
皆やさしくってカワイイもんだよ』





『・・・』





『執念深い夫も……不特定多数の男なんか
一々訴えたりなんか出来ないだろうし?
見つかったとしても
さすがに気が滅入って離婚決意するでしょ…』




聞かなきゃ…良かった、んだろうけどさ
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