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第27章 飛べない鳥・・・

『ぅ……うっ……っ…うっ…』





あの日・・・





彼と引き離されて

夫の雇った…興信所だとか…なんだか

正体のわからない業者の人達に

車に押し込まれた私は

声を押し殺せずに…車の中で泣いていた







恐かったから？


それはそうかもしれない


突然の事に

それも…夫の
カズキの仕業だと

私だって薄々わかっていた



恐ろしかった

暴力も厭わないような強行手段




まっとうな…道筋の人達なんかじゃない






事を甘く考えたり…フワフワと

彼との幸せな時間に

浮かれていた訳でもない




だけど・・・まさか



あのタイミングで


あんな強行手段に出てくるなどと



私も・・・彼も


さすがに思いはしなかった










同時に・・・希望が絶たれた




こうなる前


ほんの・・・数分か…数十分前まで


私たちは…







私と優人は・・・希望を持っていた







別れを惜しみながら

二人で幸せになるために




それが許されないという現実を

突破しようと





今度こそ・・・と

希望を持っていた





私は…信じて疑わなかった




こういうのを…盲目というのかな？

わからないけれど




ここを越えたら…優人と一緒になれる

幸せに・・・なれる




だから、また・・・頑張れる





そんな希望に満ちていたから


絶望していた






突然の異常事態…そして

その首謀者である夫の姿を見た時

車に乗せられた時





幸せだった時間も

二人で希望を抱いた気持ちも

一瞬の・・・泡沫(うたかた)のように

夢物語のように

潰えてしまった




そんな・・・感覚がした





私は…全身が悲鳴をあげるように

乗せられた後部座席で

堪えきれずに泣いていた







もっと…シンプルに言えば



一番は




繋いだ手が・・・はなれてしまったから







自分の全てをかけて

私を守ろうとしてくれた…あの人が



自分の全てで

私を愛してくれた、あの人が




優人のぬくもりが・・・ここにはない





私を一番絶望させたのは


彼と…本当に離ればなれになったと言う


その〃現実〃だった