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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第27章 飛べない鳥・・・
キキィ・・・バタン




車が停車した






私の絶望と恐怖はピークに達した






「降りて下さい…」


『・・・』





涙が落ちるまま

ずっとうつむいていた私は



ドアの開く音と

腕を引かれる力で

その外の景色を見た






『・・・』



降り立ったのは


やはり・・・と


言うまでもなく





元自宅だった・・・


自宅のマンション








バタン…



『ご苦労様…』



続いて後ろの車から姿を現したのは

依頼主である夫…




「それでは…」



『・・・っ』




私の恐怖と…彼らの緊張が

ピークに達した瞬間だったであろう



男が私を無理矢理歩かせて

引きずり出すように

カズキの前に立たせて引き渡した




『フフ……確かに』




ギュ・・・




『・・・っ』





私の手首が

カズキにしっかりと握られて

私と言う〃物〃の取引が終わる







彼らはプロさながらに

人目をはばかり

〃仕事〃を終えると

颯爽と…何事もなかったかのように

姿を消した







『・・・』


『・・・』



危なげな男達も十分過ぎる恐怖…



だけど


それが立ち去って


二人きりになることは




この男と…二人きりになるのは


私にとって


この上ない恐怖だった








どんな制裁が待っているのだろう





殴られて…投げ飛ばされて

頭が割れる程の痛み…

起き上がれなくなる程

蹴られるのだろうか



目が開かない程…叩かれて

耳鳴りが治まらない日が…続くのだろうか




水攻めでもされるのか…

熱湯でもかけられるのか




タバコの火を押し付けられるか

家具をぶつけられるのか


髪の毛を引きちぎられるか…






或いは・・・辱しめを受けるのか










私にとって…ここは

そういう場所





体の外側からも内側からも

無数の痛みを受ける場所…






大きなマンション…その建物と

夫の姿を見た私は



瞬時に…これまでここで起こって来た

数々の恐怖が

フラッシュバックのようによみがえり

震える足で立っていた
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