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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第27章 飛べない鳥・・・
ドックン…ドックン…ドックン



自分の心臓の音が
全身に鳴り響いていた






『・・・まりあ』



『~~っ・・・』




夫の一言・・・一挙一動に

うろたえを隠せない私は

びくびくとその様子を横目でみていた




訪問者を知っていて嘘をついていたのは

バレている




それを咎められるのか


いや・・・既に、それどころの話ではない






『カズキ・・・私・・・っ』










ピンポーン・・・









ものの数分もしないうちに

玄関の呼鈴が鳴る








『まりあ・・・〃来客〃だぞ』






『カズキ・・・。・・・。』






硬直して応対しない私を

夫が促した













『〃俺の客人〃だ・・・

丁重に・・・出迎えろ』










私は・・・本当は







心根(ほんとう)を言えば










モニターの向こうの彼の姿を見たとき


私は・・・








そのモニター画面をカズキに見られまいと

見つかる訳にはいかない…と

激しい動揺の中にいながらも





心の奥底では・・・私は






その姿を捉えた瞬間に

〃安心〃していた・・・









空気の澄んだ場所に

飛び立って行けるような気持ちになって

胸に……肺に

スゥーっと空気が通るような感覚…





何もかもから…救われて

守られたような気持ちになる感覚






そんな気持ちにさせてくれる

その人の姿を・・・一目見ただけで





ロックを解除するのではなく


私は・・・




このまま・・・身ひとつで




この恐ろしい夫を振り切って





エレベーターに飛び乗り


或いは…長い階段を駆け降りてでも





すぐにでも・・・その人の元に





広くて・・・あたたかい




その胸の中に飛び込んで





その手を握り・・・その手に引かれて






今度こそ・・・本当に


二人きりで






誰に・・・何を言われようとも




誰かを悲しませようとも







二人きりで・・・今度こそ



誰にも見つからない場所へ



彼と共に・・・逃げ出したいと








私は・・・本当は


そう思っていた

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