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鬼ヶ瀬塚村
第2章 出発から村人の出迎え迄
景色は徐々に閑散とした畑や田んぼに変わり始めた。

なんだか水辺特有の湿度を含んだ香りがする。

もうかれこれ6時間は出発から経過していた。

『ちょっと休憩がてら電話するわ』

真理子さんがサーフを雑木林沿いの空き地に停車させた。

『実家に?』

『うん、後編集者に』

こんな雄大で空が大きく見える自然豊かな田舎の風景、真理子さんが放った"編集者"という言葉は異質だった。

蝉が力一杯鳴く中、僕は真理子さんの小さな後ろ姿を眺めていた。

車から少し離れた場所で、何やら手振り身振りして携帯電話で話している。
仕事のスケジュールでまた揉めているのだろうか。
思えば昔はよくこんな風に助手席に座ってドライブや旅行をよく楽しめたものだ。

真理子さんが無理を言って時間を貰い、家でボンヤリしている僕を連れ出してくれていたのも過去の話だ。

今は週刊紙と月刊誌の連載に忙しい彼女、サーフの座り心地も久しぶりだとしみじみ思った。

よくもまぁカナダ旅行なんて行けたもんだ。

僕にしっかりとした稼ぎがあれば…或いは"あの日"僕がコチラを選択しなければ…もっと真理子さんに余裕を与えられたかもしれないのに。
長くしなやかで黒々とした真理子さんの髪の毛が日を受けて燦々と輝く。

"仕事"をしている真理子さんは本当に綺麗だ。

僕が立てない僕の夢の場所で、その両足の裏で何を感じているんだろう。

僕は真理子さんがこちらを見ていない隙にポケットから白くて丸い錠剤を取りだし、口内に放り込んだ。

それを水で食道から胃に流し込む。

これが効き始める頃には、きっと真理子さんは綺麗じゃなくなる。

僕は真理子さんと少し近い場所にいけるはずなんだ…。
………

『うーん、そうですね、鬱病ですね、うーん、典型的ですね』

医者がわかりきった事を僕に告げる。

『щ└БΩ∇∝*ゐ』

『…はい』

『◎∃♪Φεй┣Ё』

『…ええ』

医者が言ってくる言葉を適当に消化し、僕はとにかく楽になりたくて処方箋が欲しかった。

適当に相槌を打ち、ようやく解放された。

『∈AκЛХпΦζ』

『…はい、ありがとうございました』
………

僕は5~6年程前から薬がないと眠れなかった。
真理子さんが眩しすぎて焦燥感から時折体調が悪くなった。
安定剤がなくてはまともに真理子さんの隣にはいられなかった。
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