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鬼ヶ瀬塚村
第2章 出発から村人の出迎え迄
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"何もない"
真理子さんが言うようにナビの画面にはただただクリーム色をした土地表示ばかりだった。
東京ではここにコンビニだとか駐車場だとかホテルやガソリンスタンドなんかがロゴ表示される。
真理子さんの実家の周辺は何も表示されていなかった。
『真理子さん、これが村の名前?』
"鬼ヶ瀬塚村"
なんだかおどろおどしい名前の村だ。
それに聞いた事もなければ見た事もない。
『うん、そう』
真理子さんがナビの画面を人差し指で弾いた。
画面はすぐさま現在位置である高速道路を表示させる。
『お…おにが…おにがせ…づか?』
僕が訊ねると真理子さんは答えた。
『そ、鬼ヶ瀬塚村』
『凄い名前だね』
『でしょ?私が自分でナビに地名登録したのよ?』
『地図にないって事?』
『そ、地図にない村。鬼ヶ瀬塚村のちご坂って場所に私の実家があるの』
『ちご坂って…奈良の白毫寺の?』
『ん、まぁ…どうだかね、何か関連はあるかもしれないけれど…』
真理子さんは曖昧に言い、少し前進した前の車に引寄せられるようにアクセルを踏む。
僕の脳裏には奈良にある白毫寺の伝説を思い浮かばせた。
僕は大学でほとんど漫画ばかり描いていたけれど、地理の授業や歴史が好きで土地伝説なんかにも興味があった。
僕が知っているちご坂というのは、奈良県に存在する白毫寺近くの坂の名前だ。
おおまかな由来は稚児の姿をした鬼が関係している。
だいたい鬼という漢字の付く場所には鬼伝説が多かれ少なかれ存在する事を僕は知っている。
もしかしたら真理子さんの地元で鬼に会えるかもしれない。
会うのが叶わなくても、土着の鬼伝説や話だとか興味を掻き立てるような事があるかもしれない。
『鬼なんていないわよ』
見透かしたように真理子さんが言った。
『なんだ、残念だなぁ』
『鬼なんていなくなっちゃえばいいのに、いなくていいモノよ?』
『真理子さん一度会った事あるの?』
茶化して聞いてみる。
『ないわよ』
真理子さんはそう言って煙草に火を点けるのだった。
………
渋滞が薄くなり、車間距離がまだ狭いものの高速道路は流れを作り始めた。
順調に進みだしている。
真理子さんが言うようにナビの画面にはただただクリーム色をした土地表示ばかりだった。
東京ではここにコンビニだとか駐車場だとかホテルやガソリンスタンドなんかがロゴ表示される。
真理子さんの実家の周辺は何も表示されていなかった。
『真理子さん、これが村の名前?』
"鬼ヶ瀬塚村"
なんだかおどろおどしい名前の村だ。
それに聞いた事もなければ見た事もない。
『うん、そう』
真理子さんがナビの画面を人差し指で弾いた。
画面はすぐさま現在位置である高速道路を表示させる。
『お…おにが…おにがせ…づか?』
僕が訊ねると真理子さんは答えた。
『そ、鬼ヶ瀬塚村』
『凄い名前だね』
『でしょ?私が自分でナビに地名登録したのよ?』
『地図にないって事?』
『そ、地図にない村。鬼ヶ瀬塚村のちご坂って場所に私の実家があるの』
『ちご坂って…奈良の白毫寺の?』
『ん、まぁ…どうだかね、何か関連はあるかもしれないけれど…』
真理子さんは曖昧に言い、少し前進した前の車に引寄せられるようにアクセルを踏む。
僕の脳裏には奈良にある白毫寺の伝説を思い浮かばせた。
僕は大学でほとんど漫画ばかり描いていたけれど、地理の授業や歴史が好きで土地伝説なんかにも興味があった。
僕が知っているちご坂というのは、奈良県に存在する白毫寺近くの坂の名前だ。
おおまかな由来は稚児の姿をした鬼が関係している。
だいたい鬼という漢字の付く場所には鬼伝説が多かれ少なかれ存在する事を僕は知っている。
もしかしたら真理子さんの地元で鬼に会えるかもしれない。
会うのが叶わなくても、土着の鬼伝説や話だとか興味を掻き立てるような事があるかもしれない。
『鬼なんていないわよ』
見透かしたように真理子さんが言った。
『なんだ、残念だなぁ』
『鬼なんていなくなっちゃえばいいのに、いなくていいモノよ?』
『真理子さん一度会った事あるの?』
茶化して聞いてみる。
『ないわよ』
真理子さんはそう言って煙草に火を点けるのだった。
………
渋滞が薄くなり、車間距離がまだ狭いものの高速道路は流れを作り始めた。
順調に進みだしている。
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