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鬼ヶ瀬塚村
第11章 大学時代
『やぁやぁ、若人よッ!精進しているかねッ?』

顔を上げると真理子さんがニヤニヤしながら僕を見下ろしている。

この人はあの電車以来毎日毎日飽きる事なく僕に絡んできた。

周りは終始"付き合っているんじゃないか"と噂を立てた。
僕はそういった青臭い話が嫌いだった。
誰よりも青臭い子供だったくせに…。

『先輩、僕に話しかける暇あったら漫画描いたらどうですか?』

漫画研究部の教室で、漫画を描いている時間より明らかに僕にちょっかいを出している時間の方が長い。

『えー?描いてるわよーバッチリよ』

『嘘ばっかり…』

『嘘じゃないもん。本当だもん』

先輩がそばにいると僕の鉛筆の先は動きをよく止めた。
迷惑以外他ならない存在だ。

『おーい、荒岩ッ』

呼ばれた声に真理子さんが顔を上げる。つられるようにして僕も真理子さんの視線を追った。

漫画研究部の部長が手招きしている。

『なんですかーッ?』

真理子さんは面倒臭そうに右手を頬に当てて声を上げる。

『ちょっと来てくれる?』

『松尾部長が来たら良いじゃないんですかーッ?』

真理子さんの一言に教室がザワめいた。漫画研究部の部員が真理子さんを驚いた顔で見ている。
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