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鬼ヶ瀬塚村
第11章 大学時代
"先輩が好きです"なんて一度も言った事がないのに、僕は失恋した。

『まぁ、頑張ってよね。応援してる』

息が出来ない…。
頭に酸素が届かない…。

そう真理子さんは言うと"松尾部長ーッここのホワイトはどうしたらいいのーッ?"と彼に駆け寄って行った。

僕は両肘を抱えて顔を腕の中に埋めた。
そしてガタガタと無意識に右足を貧乏揺すりしていた。
………

『真理子さんの当時の誘導術は凄かったなぁ…結局知らないうちに好きになっていたわけで…』

僕は右手を水田に入れた。
人を恐れないのか丸いオタマジャクシが僕の指先をつつく。

あの生意気そうなニヤニヤ顔は忘れたくても忘れられなかった。

あの不敵な笑みはなんとも表現しづらい力を秘めている。
人を小馬鹿にしているような、それでいて全肯定してくるような…なんだかそれを見ると僕は安心と不安の同時に襲われたものだ。
………

当然、その日僕は自身で自身を慰めながら布団の中でうずくまっていた。

今頃先輩は松尾部長の部屋で一糸まとわぬ姿なのだろうか?

どんな顔をするんだろう?
どんな声をあげるんだろう?
どんな体温なんだろう?
どんな香りがするんだろう?

僕はガサゴソ動いて布団から顔を出した。そこらじゅう丸めたティッシュだらけだ。

『馬鹿か僕は…』
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