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鬼ヶ瀬塚村
第11章 大学時代
『ほぉ、これがうら若き健康男子の部屋か』

ようやく落ち着いた僕は先輩を部屋に上げた。この部屋に女の子が来るのは二度目だ。
一度目は大学のプリントを届けてくれた娘だ。結局何もなかった。下心とは本当に恐ろしい。

『すみません…ちらかってて』

僕はパーカーの袖で涙を拭いながら彼女の前で正座していた。

『うんッ!汚いね、煙草臭いし…それに精液臭い』

僕は顔を真っ赤にして縮こまった。

『まぁ、君は私が好きだものね。当然かな?』

真理子さんはニッコリ微笑んだ。

『で…なんですか?またからかいに来たんですか?』

昨夜あれだけ"次に会ったらこう言おうッ!必ず言おうッ!死んでも言おうッ!"と思っていた言葉とは全く違うフレーズが唇からスルスル出てくる。

『あれまぁ、素直じゃないな。帰ろうかな、私』

真理子さんが立ち上がる素振りをしたので僕は慌てて

『先輩、ビール飲みますかッ?』

とやけに嫌な電子音を終始ジーッと鳴らす小型の冷蔵庫からビールの缶を取り出しながら叫ぶように言った。

先輩はクックックッと笑って

『未成年のガキの癖に、随分上等な物飲むんだね君』

と言った。

『え…あ、すみません…』

『いいよ、許してあげる』
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