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鬼ヶ瀬塚村
第11章 大学時代
『あ、そうだ』

先輩は何か思い出したように突然言った。

『君、名前なんて言うの?』

『えッ!?最初に教えたじゃないですか!!』

『冗談ッ。ノブヒトくんよね?』

『違います』

『シンジくんか』

『わざと間違えてます?信じる人って書いてノブトです』

先輩は"アッハッハッハッ!!"とお腹を抱えて笑った。

『やだぁ…変な名前ッ!』

相変わらずだな、この人は…あれだけ泣いたのをちょっと後悔した。

『なんでそんな顔するのよ?』

本当に調子が狂う。
けど、僕はとても穏やかで優しい気持ちになっていた。

『で、結局どうしたんです?』

『ん?ノブが気にしてる結果を言いにこようかなぁって思って』

先輩が初めて僕を"ノブ"と呼んだ。
"ノブ"なんて…中学生以来だ…。
僕はジワジワと沸き起こる笑みを噛み殺し、さりげなく手で口元を覆って咳き込むフリをした。

『結果って?』

『んー…そうだなぁ、結論から言うとね、エッチしてないよ?』

『え?』

『だから、漫画研究部の松尾部長と』

僕は半分期待していた答えを言われて飛び上がりそうなくらい嬉しかったが、相変わらずゲホゲホと咳き込むフリをしながら"へえ"だとか"ふうん"と気取っていた。
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