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鬼ヶ瀬塚村
第11章 大学時代
『最初はね、黒いヌイグルミが欲しかったの』

『うん、そう言ってたね』

『真っ黒のヌイグルミならノブの部屋に飾ってたらヤニがついても目立たないでしょ?』

『うん』

『だから、黒いのが私は欲しかったの』

『最初から僕の部屋に飾るつもりだったの?』

『うん』

真理子さんは頷いた。

『でも、ノブはピンクのウサギがいいって途中から言い出したから…私、どうでもよくなっちゃって…だって私が煙草を止める訳じゃないもの』

『どういう意味?』

『ノブがウサギを狙った時に私思ったの。"あ、そうだ禁煙させよう"って』

『なんで?』

『特に深い意味はないけど、早死にして欲しくないから。それに煙草は将来ハゲるわよ?』

真理子さんの言葉に僕はポカーンとした。そんな僕の様子を気にもせず、彼女は言う。

『でね、白い猫ちゃんが結局取れたでしょう?』

『うん』

僕は手の中で招いている猫のヌイグルミに一度視線を落とした。

『真っ白だから、ノブが煙草吸ったら黄色くヤニがつくよねぇ?』

『うん、そうだね』

『そしたら私がノブの部屋に行くたびに禁煙できてるかチェックできるじゃない?』
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