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鬼ヶ瀬塚村
第12章 達弘
まさか達弘さんがたった1人尊敬する漫画家が、姉の真理子さんではなく僕だったとは驚いた。

『んでよ…おめに頼みがあるんだっぺ』

『なんです?』

嫌な交換材料にされたらどうしよう。この狐顔の男なら手の平を返して僕をゆすりそうだ。
仮にもあの脅す匠の真理子さんの弟なのだから。

『ノブさん…ほれッ…こごッこごッ!』

達弘さんは胸ポケットからボールペンとシワシワになったメモ帳を出した。

そしてスーッと僕の前に滑らせる。

『だのむッ…オレの為だげに…オレの為だげにぃッ!エロ☆ちら爆乳美少女戦士のバニーぢゃん描いでぐれぇッ!』

バニーちゃんとはエロ☆ちら爆乳美少女戦士の主人公の少女でちらちら星からやってきたお姫様だ。

いつも猫を肩に乗せた彼女の"フィニッシュ"時は頬を押さえてコマのあちこちへ星を散らばすパターンが多い。

自分でも心底くだらなく思うが、星は何故だか彼女の股関から飛び出してくる。編集のアルバイトみたいな男が第3話の構成の打合せで無責任に提案し、何故か上はそれにゴーサインを出した。
お陰で今でもバニーちゃんは"フィニッシュ"時に股関から星を撒き散らしている。

『あづいなが…仕事で汗流してよ、ポッケ覗いてよ…バニーぢゃんが描がれだ紙がありゃあオレ何時間でも働けるがんねッ?』
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