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鬼ヶ瀬塚村
第12章 達弘
自分としてはMだとかSだとか意識した事はなかったけど、真理子さんが"ノブは相当なMだねぇ、私とこんな長く居られる人初めてだよ?"とSッ気たっぷりのニヤニヤ顔で言うもんだから…僕は自分と相対する真理子さんのイラッとする箇所をバニーちゃんに叩き込んだのだ。

編集の言うSッ気のある娘が真理子さんみたいなタイプはわからなかった。
けど、僕が原稿のネームを提出すると軽いノリの編集担当がろくにネームを見る事なく"いいんじゃないすかね?"と鼻で笑っていた。

確かに真理子さんがモデルのバニーちゃんだが、妻子ある身でありながらここまでシスターコンプレックスだと気持ちが悪い。

『はあ…ありがとうございます』

『はよ描いでぐれッ!出来たらサインと"大好ぎなタッチャン☆"で書いてぐれッ!』

僕は渋々ボールペンを握るとバニーちゃんをちょろちょろっと描いた。
そして吹き出しを書き込み、中に"大好きなタッチャン☆"とちょろちょろっと書く。

どう見たって男の字で、あろうことかミミズのように情けなく揺れたその字に達弘さんは大喜びだった。

『バニーぢゃんが…バニーぢゃんが…大好きだっで言うでぐれどるばッ!…せんせッはよサインも書いでぐれッ!』
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