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鬼ヶ瀬塚村
第12章 達弘
僕はバニーちゃんの横に"下半身テロ"と書いた。

『日付もッ!』

日付も書き足した。

胸ポケットで彼の汗を吸い熱で乾き、やがてシワシワになったのであろうメモ帳を達弘さんは満足げに眺めていた。

『ノブさんよぉ…ありがどな、ありがどな…一生大切にするッ!』

『誰にも言わないでくださいよ?』

達弘さんは夢中でバニーちゃんを見つめたまま僕の言葉に答える。

『もっだいねぇなぁ…みなに見せればよぉ、おめは村で人気者だっぺのに。知っでっか?ノブさんよ徳川先生をよ』

『徳川先生?』

ようやく達弘さんが顔を上げて僕を見る。相変わらず少年のような顔だ。

『知んねぇのか?ほら、あの猫みてぇなロボットどぉ、手足が伸びる麦わら帽子の野郎が主人公でよ…名前を書くと…人間が生き返る漫画描いてる人だっぺ』

『ああ、徳川マイケル先生か』

『そだ、天使が見えるやづだ』

徳川マイケル先生と言えば、大御所中の大御所だ。
業界の人間で彼を知らない人間はいないだろう。
それどころか日本中の人間が彼を知っているはずだ。

彼の作品は訳文され、海外にも売り出されている。
海賊版すら出回り一時期国際的に問題にすらなった人気漫画家だ。

むしろ漫画家の代名詞、そして漫画家なら誰もが彼に憧れた。勿論僕もだ。
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