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鬼ヶ瀬塚村
第15章 畜生道
『それは出来ない。鬼神巫女は出産出来る身体を持つ村長か、閉経が来た村長が10年以内しか出来ない』

『弘子さんは…いつから村長を…その…』

『弘子に閉経が来たのは彼女が53歳の時でした…もうかれこれ9年前です』

『けど、後数ヶ月は…優子ちゃんに生理だって…来るかも知れない!』

『駄目なんですよ信人くん』

宗二さんの両膝にハラハラと大粒の涙が落ちていく。それは次第に大きなシミを作っていった。

『閉経が訪れ、10年以内に次の鬼神巫女を後継者に選べない場合…村長は…鬼神祭を行う際に少しづつ毒を飲むのです…』

『え…毒を…』

『そうです。毒です。弘子はずっと9年間毒を取ってきました。もう今では身体が限界でしょう…だから…真理子は…そんな母親と優子の為に君を忘れる道を選んだ…掟なんだよ、信人くん』

『馬鹿な…』

出た言葉は否定だった。宗二さんは悲しそうな顔を上げた。

『ええ、馬鹿げてます。でもこれが抗えない村のありかたなのです…運びこまれた死体を最後に鬼神の元へ運ぶ鬼神祭…あれは今真理子以外出来ないのです』

『だったら…どうして…真理子さんは…』

そうだ。彼女の性格ならわざわざ東京の大学まで来る筈が無い。きっと、ここに僕がいない状態…この村から出る事もなく過ごした筈だ。
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