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鬼ヶ瀬塚村
第15章 畜生道
『娘は君を愛してるんだよ。だから最後の最後まで迷った…だから君をここへ連れて来たんだ…けれど、この事実を受け入れられた部外者は…いなかった…受け入れられる部外者は殺人を犯してここへ死体を持ち込む"どど"だけだ』

『"どど"…』

『そうだよ信人くん。どどとは死体を持ち込む人間の事なんだ…村では部外者に秘密が漏れないよう独特の言葉を使う…どどとは…殺人者の事なんだよ…奴奴と書いて"どど"なんだ…』

『………あ…あの…じゃあ、昨晩………あなた達が食べていたのは…』

『そうだ、一昨日運びこまれた女の死体だ…』

彼は迷う事なくそう告げた。

聞いた瞬間、僕は藁の上に嘔吐した。
ゲロゲロと酸味を帯びたそれには素麺がまるごと含まれていた。
涙が出てくる。
焼けるような喉の痛みに咳き込みながら僕は言った。

『だから…僕だけ…皿が違ったんですね?』

宗二さんは黙って頷いた。僕は再び吐いた。隣で嬉しそうにハシを動かしていた真理子さん。彼女が食べていたのは…牛肉や豚肉じゃないッ!人間の女の肉だったんだッ!

僕は涙を流しながら吐き続けた。

やっと意味がわかった気がする。
奴奴が愛の言葉だと今朝宗二さんは言っていた。
確かにそうだ…本当に愛していれば、この狂った事実を表現するその言葉は音でしか存在しない。
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