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鬼ヶ瀬塚村
第15章 畜生道
『集団の力とは恐ろしいのだよ信人くん、それにさっきも言ったが殺人を犯した人間を無条件に君は責められるかい?殺人という名の正義も時には存在するんだよ』

『だからって…』

『否定しないでくれ、私は君を殺したくない。真理子に生きる希望を与えてくれたのは君だったんだから…そんな信人くんを殺したくない…』

『………』

『すぐには理解できないよ。私も最初はそうだったが、やがては受け入れたよ…何より私自身が奴奴だったからというのが一番の理由だったが…』

やはりか…。

『あなたは一体誰を殺したのです?』

僕は見つめた。奴奴を、鬼を、真理子さんの父親を。

『私は…33年前に自分の兄を殺したんだ…』

『………ッ』

『仕方なかったんだ、逆上して…気が付いたら兄は死んでいたんだ』

『何故、殺そうと思ったんです?』

『…信人くん。村上宗一郎という人物に聞き覚えはないかな?』

村上宗一郎…どこかで聞いた事があった。確か教科書か何かで…現代の授業で…。

『私の父、村上宗一郎は時の首相の右腕だった。財務省に勤めていた大臣だったんだよ』

『………』

そうだ。
村上宗一郎財務大臣、有能な人物で友人であった当時の首相のいい将棋相手だと教科書に書かれていたはずだ。

『父はある時、汚職事件を起こし…そして私達村上家は一家離散状態になった…母は自殺したよ、祖母もね』
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