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鬼ヶ瀬塚村
第15章 畜生道
『じだらばかんこずるんが?こやっちゃのどいだら下がにだぬきが裏返よるば?』

部外者に秘密が漏れないよう話す彼らの言葉、暗号なのだ。
僕は思った。
ああ、だから世界中沢山の8000以上の言語があるのか…と。

『いや、私がそうはさせない。真理子から信人くんに言えばわかって貰えるはずだ』

『な~んが、げっぢゃぐそな話ばあがっどんな?』

『一郎くん、もういい…彼の前では普通に話すんだ』

『わがっだげどよ、んがからどうすっぺ?』

一郎さんは再びウネウネうねった頭をポリポリ掻いた。

『彼にしんを見せる。そして村人として受け入れるんだ』

しんを見せる?

僕は不安げに彼らを見た。
勝手に話が進んでいくその姿は父と母が離婚の話をまとめていた時に似ていた。

理由は父の不倫だった。
僕は成人していたし、彼らの間で黙って事の成り行きを見ていた。

それによく似ている。

『しんば見せるんが?あ~…真理子ちゃん怒るっぺよ?』

『私の我が儘からこうなってしまった。けれど皆が幸せに暮らすにはこの他ないだろう?』

僕の幸せはどうなるんだ?

『ん~…まぁ、お義兄ざんが言うんなら僕は構いまぜんよ』

一郎さんはそう言って僕を見る。

『まぁだ、ちんぽこ丸出しが?はよぅ着れ、みっどもねぇ』
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