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鬼ヶ瀬塚村
第16章 餓鬼道
僕はかつて真理子さんに酷い事をした。
そうだ、彼女を裏切った。あんなに大切にしていたのに、どうして僕は選択を間違えたのだろう?

あんな簡単な分岐点だった。
どうして僕は…間違えたんだ?

なのに、どうして真理子さんは僕を愛してくれるんだ?

こんな惨めで矮小な僕を…。

僕の涙はボロボロ落下し、ジャケットコートの裾に落ちていった。

『泣いででもぉ、仕方ないっぺ。ほれ立ってぇ』

一郎さんが僕の腕を持ち上げ、立たせた。
僕は泣きじゃくりながら歩きだした。

真理子さんが好きだ。
だけど、真理子さんが怖かった。

『見えでぎたわ』

しばらく歩くと、あたりは煙で白けてきた。
赤く燃えた炎が当たりの木々や竹を照らし出していた。

ボーン…ボーン…ドーン…ドーン…

太鼓がすぐそばで鳴らされているのか胃袋がビリビリいう。

『もう少しでずわ』

一郎さん、僕、宗二さんは並んだまま歩いた。
まるで僕は連行される犯罪者みたいだ。

何か掛け声らしきもの、笑い声、様々な揚々とした声がする。
僕は思った。
こんな場所まで来てようやく冷静に、妙に冷静に…。

ああ、多分僕はそれを見たら東京には生きて帰れないのだろう。
マンションは真理子さんのアシスタントが引き払うのだろうか?
家財や家具は?
あの生活は?

僕は燃え盛る空を見上げていた。
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