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鬼ヶ瀬塚村
第17章 神
ボーン…ドーン…ドーン…ボーン…

深い響きを轟かせる太鼓。
煙を巻き上げる柔らかな風。
何も知らず、僕がよく知る輝きのままこちらを見下ろす大きな月。
焼ける臭い。
煙がチクチク目に染みて痛い。

『階段あるっぺ、気をづげでね信人ぐん?』

ああ、この先にきっと真理子さんがいるんだろう。
僕にはもう抗えないのだ。
鬼として生きる道を選んだ彼女がこの先にいる。
きっと角を生やし、牙を剥き出しにして…。

目蓋をギュッと閉じた。
涙が溢れた。

『行こう』

腰を宗二さんに押された。
僕は長い長い石段を見上げ、一歩踏み出した。

ヒンヤリ冷たい。
切り傷で熱を帯びた足の裏には気持ちがいい。

また一歩踏み出した。

きっと死刑囚とは最期こんな気持ちで13階段を上がるんだろう。

僕だって一度は見た白いロープの輪へ向かって…彼らは13階段を…。

僕は一歩踏み出した。

この村は屍の上に出来ているんだろう。

僕は一歩踏み出した。

多くの怒りや悲しみの骸の上に存在するんだろう。

僕は一歩踏み出した。

彼らは金を村人は人生を交換するのだ。
人を殺めた奴奴達は今笑顔で生きているのだろうか?
それともまだ容疑者なのだろうか?
少なくとも殺人者とは世間は言わない。
何故なら死体は全て"ここ"にあるのだから。
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