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鬼ヶ瀬塚村
第17章 神
僕はその神々しく美しい鬼神巫女の直線上に立っている。
黒く埃が乗ったジャケットコート姿で。なんとも見っとも無い格好で。
僕は真理子さんにはにかみ笑いのような曖昧な笑みを浮かべていたと思う。
村人が、そして背後で宗二さんが見守る中、僕は歩きだした。
直線上にいる真理子さんへと向かって。
ゴウゴウととぐろを巻きながら燃える炎の中には亡骸があった。
ちょうど左手を小首に傾げるような形だ。
その地獄の炎を背に、美しい鬼が涙を流して僕を見つめている。
『ごめんよ真理子さん…』
僕はそっと近付いた。
真理子さんの顔はくしゃくしゃだった。
眉毛と眉毛がくっついて繋がるんじゃないかって位目一杯ハの字にしている。
目は真っ赤に充血し涙が止めどなく重力に従って落下していく。
唇はワナワナ震えていた。
『怒ってる?』
僕が訊ねると真理子さんは視線を一度僕の背後へ向けた。宗二さんを見たのだろう。
『どうして、ねぇ…どうしてよ?』
再び大きな目が僕に向けられる。
『わからないよ。なんだか成り行きで…』
『馬鹿だねぇ…』
真理子さんは両手で顔をおおった。
それでも涙が細い指の隙間から流れ出していた。
『僕、どうしたら良いんだろう?』
『知らないわよ…』
黒く埃が乗ったジャケットコート姿で。なんとも見っとも無い格好で。
僕は真理子さんにはにかみ笑いのような曖昧な笑みを浮かべていたと思う。
村人が、そして背後で宗二さんが見守る中、僕は歩きだした。
直線上にいる真理子さんへと向かって。
ゴウゴウととぐろを巻きながら燃える炎の中には亡骸があった。
ちょうど左手を小首に傾げるような形だ。
その地獄の炎を背に、美しい鬼が涙を流して僕を見つめている。
『ごめんよ真理子さん…』
僕はそっと近付いた。
真理子さんの顔はくしゃくしゃだった。
眉毛と眉毛がくっついて繋がるんじゃないかって位目一杯ハの字にしている。
目は真っ赤に充血し涙が止めどなく重力に従って落下していく。
唇はワナワナ震えていた。
『怒ってる?』
僕が訊ねると真理子さんは視線を一度僕の背後へ向けた。宗二さんを見たのだろう。
『どうして、ねぇ…どうしてよ?』
再び大きな目が僕に向けられる。
『わからないよ。なんだか成り行きで…』
『馬鹿だねぇ…』
真理子さんは両手で顔をおおった。
それでも涙が細い指の隙間から流れ出していた。
『僕、どうしたら良いんだろう?』
『知らないわよ…』