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鬼ヶ瀬塚村
第17章 神
『変態さんだっぺぇッ!』

優子は無邪気に笑いながら僕のコートの裾を引っ張る。

『あれまぁ、立派な男根様っぺなぁッ!』

『やめなさい、優子』

宗二さんが優子の手をたぐりよせて僕から離した。

『父ぢゃんよ、ノブはもう鬼ヶ瀬塚村の人間なんだろぉ?じゃ一緒に暮らしでいいんだっぺな?』

優子は目をくりくりさせながら宗二さんの肩に頭を乗せる。

『よがっだなぁノブ、オレの部屋よぉ隣が空き部屋なんだっぺ。遠慮いらねぇ、づがえづがえ』

『あの…』

僕と宗二さん、そして真理子さんが無言の中優子は村人の視線を独り占めして続ける。

『んでよ、毎日オレと花火ばすんだ。でよ、風車作り見せてやるよッ!』

そして長い沈黙が訪れた。
紗江さんが立ち上がり"やだ…お義母さん…"と呟きながら僕のわきを一目散に走っていった。

彼女のサンダルの音が聞こえなくなった頃、真理子さんがポツリと言った。

『ノブと2人きりにさせてくれないかな?』

『…構わないよ』

宗二さんが言うと、達弘さんが男達に目配せし"ハッやぁッ!!"という掛け声に合わせて太鼓を打ち鳴らした。囃子がその合間合間に重ねるように鳴る。

女達が再び男達に酒を注ぎ始めた。

再び祭りが盛り返して来た様子だった。
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