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鬼ヶ瀬塚村
第19章 あの日
僕は黙ってしまった。

『君と外食する時に私は割り勘しようっていつも言うでしょ?でも、君は頑なに断ってた。凄く嬉しかったよ、女の子扱いされてる気がして。だから私は君をたててあげなきゃって思って、精算が済んだ後に帰り道で半分渡してた。ね?わかってるでしょ?』

『それは…』

確かにちょっとは正解だ。店員の前で堂々と女の子に出されたくない。
男の本音だ。
かっこよくカードや万札を店員に渡す姿を見せたい。けど、大学生の僕だ。
アルバイトと僅かな仕送りだけでは堂々と出せない時もある。
それを知ってか彼女は帰り道で半分渡してきたり、コンビニで雑誌や新聞、飲み物なんかを買ってくれた。

『それに、君の前では君以外の男の子の漫画を誉めなかったよ。勿論プロは別だけど、漫画研究部の男連中をね』

よくわかっていらっしゃる。

『君はどうだった?今も違和感感じないかな?』

『違和感?』

僕は考えこんだ。真理子さんはそれを見ると"はぁッ"と天井に向かって溜め息をついた。

『あ~あ、だからだろうね君が駄目だったのは。ヒロインが死んでるのよ、まるで生き生きしてない。私と付き合ってちょっとは女心を知るかなって思ったけど、まるで駄目ね。身体ばっかり描くの上手くなっちゃって…』

真理子さんはニヤニヤした。
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