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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
顔を上げると僕と真理子さんに向かって紗江さんが走り寄って来るのが見えた。

彼女は肩で息をしながら僕の前で止まった。

『…お義母さんが、会いだい言うどるば』

紗江さんはそう言ってエプロンの裾で汗を拭った。

『え…』

僕が紗江さんを見上げていると、しばらくして彼女の背後から足音がしてきた。

『…まぁまぁ…随分歩いたわ』

紗江さんの後ろから杖にもたれかかるようにしてやって来たのは弘子さんだった。

『…お母さんッ!無理しないでよッ!』

真理子さんが慌てて弘子さんに駆け寄り支える。
弘子さんは真理子さんの白衣の中で苦しそうに息をしていた。

『紗江ッ!何考えてるのよッ!?』

『いいのよ真理子、私から彼女に連れて来るよう頼んだんだから…』

『だからって…』

真理子さんは紗江さんを睨んだ。紗江さんは気まずそうに目を反らす。

『信人さん、隣に座ってもよろしくて?』

弘子さんはそう言って微笑んだ。額は汗で濡れている。

『も、勿論ですよ。大丈夫ですか?』

僕は立ち上がり、弘子さんを石段へと座らせた。

『ああ、随分久しぶりに自分の足で遠くまで歩きました…』

弘子さんはそう言って自分の右肩を左手の拳で叩いた。

『僕が伺ったのに…』

『構わないのよ、気にしないでちょうだい』
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