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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
『真理子、紗江さん、少し彼と2人だけにして貰え無いかしら?』
弘子さんはそう言って真理子さんと紗江さんを見上げた。
『…でも』
真理子さんは食い下がろうとする。
紗江さんは無言でスタスタと階段を上がって行った。
『あなた、初めての"しん"でしょう?途中で抜け出すなんて鬼神様がお怒りになられるわ。それに皆も動揺してるでしょう。行ってやりなさい』
弘子さんはそう言った。
真理子さんは、弘子さん、僕、弘子さんと視線を動かした後、小さく頷いた。
そして手にしていた夜叉の面を見下ろし
『勤めあげてきます』
と返した。
彼女は静かに夜叉の面を顔にあてがい、後頭部の紐をギュッと縛った。
夜叉が目の前にいた。
立派な白衣に緋袴の夜叉が。
その鬼神巫女は静かに衣擦れの音だけ鳴らし、階段を上がっていった。
それをちょうど僕と弘子さんと最上階の間あたりまで見送ると弘子さんは言った。
『まず、謝らせてちょうだいね信人さん』
『…あ、いや…いえ』
僕は返事に困った。
『夫はこの私を正しい在り方で土に返そうとしただけなんですよ』
『………』
脳裏に必死で僕に弘子さんへの愛を語る宗二さんの顔が蘇った。
『僕も宗二さんの立場ならきっとそうしていたと思います』
弘子さんはそう言って真理子さんと紗江さんを見上げた。
『…でも』
真理子さんは食い下がろうとする。
紗江さんは無言でスタスタと階段を上がって行った。
『あなた、初めての"しん"でしょう?途中で抜け出すなんて鬼神様がお怒りになられるわ。それに皆も動揺してるでしょう。行ってやりなさい』
弘子さんはそう言った。
真理子さんは、弘子さん、僕、弘子さんと視線を動かした後、小さく頷いた。
そして手にしていた夜叉の面を見下ろし
『勤めあげてきます』
と返した。
彼女は静かに夜叉の面を顔にあてがい、後頭部の紐をギュッと縛った。
夜叉が目の前にいた。
立派な白衣に緋袴の夜叉が。
その鬼神巫女は静かに衣擦れの音だけ鳴らし、階段を上がっていった。
それをちょうど僕と弘子さんと最上階の間あたりまで見送ると弘子さんは言った。
『まず、謝らせてちょうだいね信人さん』
『…あ、いや…いえ』
僕は返事に困った。
『夫はこの私を正しい在り方で土に返そうとしただけなんですよ』
『………』
脳裏に必死で僕に弘子さんへの愛を語る宗二さんの顔が蘇った。
『僕も宗二さんの立場ならきっとそうしていたと思います』