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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
『いいえ、殺すよりもっと酷い事よ。結果的にそれで亡くなった人もいたけれど…』

『…何をするんですか?』

『彼を狩るのよ。選ばれた村人が、彼を猪に見立てて狩るの』

『………』

『宗二さんはこの村に代々続くやり方で作られた猪の面をつけて狩人から逃げるのよ。村人はそれを追って彼に矢を射るわ。勿論、殺さない程度の怪我を与えるだけよ…打ち所が悪くて死んだ人も過去にいたわ、だから村で推薦した一流のマタギがそれをやるのよ』

『…そんな…』

『仕方がないのよ。そうやって村は自分達を一つにしてきたんだから…貧しい暮らしから自分達だけの幸せを築く為に先祖代々続いているのよ』

『…誰でも…誰かに話せばそうなるんですか?』

『ええ、老若男女問わず御咎めを受けるわ。勿論子供であっても…』

『子供も…』

『可哀想に、一昨年うっかりと部外者に話してしまった子がいたのよ』

『………』

『優子のクラスメイトの男の子でね、とても足の早い子だったわ。何人ものマタギが何時間もかけて彼を追い回した…』

『彼は…ひょっとして…ノブくん、ですか?』

『ええ、知っていたのね。そうよ、長田信久くんという子…優子の初恋の子だったわ』

弘子さんは少し悲しそうに言った。
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