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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
『とは言っても優子はあんな子だから、ろくに相手にしなかったわ。彼ばかり一方通行の恋愛ね』

『彼は今…どうしてるんですか?』

弘子さんは手を空中へ小さく伸ばした。
人を恐れない蛍が彼女の指先にフワリと止まる。

『打ち所が悪くてね、亡くなったわ…大事な男手だったのに…優子は泣きもしなかった。あの子は死や生命をよく理解していないのよ』

『………』

『だからあの子は小さい時から率先して処理の仕事をやっていた。切れば裂ける、刺せば穴が空く死体が単純に面白くて玩具代わりにしていたわ』

何も言葉が出なかった。

『あの子はいい意味でも悪い意味でもこの鬼ヶ瀬塚村の血がとても濃いのよ。濃すぎるが故にわからない事も沢山あるの』

弘子さんはとても悲しそうだった。

『どうか巻き込んでしまった事を許してちょうだいね。私達の罪をあなたにまで被せる私達を許してちょうだい』

『僕は…』

確実に人の命を奪った。
自分の子供と…そして…。

『宗二さんの…気持ちも真理子さんの気持ちも…村の人の気持ちも…わかります…殺した人達の気持ちも…なんとなくわかります』

『無理しなくていいのよ』

弘子さんはそっと指先から飛び立つ蛍を見送った。

人は時に自分の気持ちとは別の何かで人生を決定される。
僕には真理子さんという存在で…真理子さんには僕という存在で。
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