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鬼ヶ瀬塚村
第20章 懺悔の時間
僕が漫画さえ投稿しなければ…真理子さんは僕も東京も知らずにここで村長を継いでいただろう。

行商屋がたまたま仕入れた少年ステップを、彼女がたまたま読んで、たまたま僕を見つけて…。

僕が編集の生け贄に、単なる注目性と話題性の為だけに選んだあの作品を描かなければ…弘子さんは毒に侵されず今も元気だったかもしれない。

僕が漫画を描いたばっかりに…。

『自分を責めないでちょうだい。私を責めて欲しいの』

弘子さんはそう呟いた。

『…知ってるのよ、あなたの漫画を』

弘子さんは僕の考えてる事が手に取るようにわかるのだ。
彼女との間に隔てはなく、甘く優しく、僕は黙りこんだ。

『真理子が16歳の時、突然言い出したわ"私は東京に行ぐっぺ"って…私に漫画を見せたわ。信人さん、あなたが描いた漫画をね』

『………』

『私はとても困ったわ。でも、いつも仕事も鬼神祭にもほとんど顔を出さずに秘密基地に隠れていた真理子が突然明るくなった事が母親としてとても嬉しかった』

背後で歓声が聞こえた。
太鼓囃子が一層強くなった気がした。

『私には真理子の前に2人子供がいたの。みんな小さい時に死んでしまったけれど…三等親以内の結婚が昔は当たり前だったわ。だからみんな生まれる子は身体が弱かったのよ』
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